2009年04月06日

ロンドン日記090330

3月30日(月)。
 眠くてたまらなかったのに2、3時間おきに目が覚めます。携帯にメールや電話がきて、そのバイブ音で目が覚めるという敏感さ。電話は受信した側が国際電話の料金を払うことになると聞いていたから、出ないでご本人にメールしたら「かけてないよ?」という返信。なんだったんだ、あれは?
 メールしたり、夕べ干した洗濯物の乾き具合を確かめて干す場所をかえたり、早朝からごそごそと活動。
 7時を過ぎて朝食を食べに降りていったら、YさんとNさんが先に食べてました。Nさんはすでにジョギングしてこられたとのこと。さすが、役者さん。あとでUさんも来て、同じカンパニーの役者同士での疑似恋愛の話で盛り上がりました。「そんな生々しいもの、お客さんに見せるものではないし、芝居が終わったあとは必ずうまくいかなくなる」そーよ、そーよ、と相づちを打ちながら「あ、私、うちの劇団の主宰者と結婚した」と言うと、「そういう場合もありますよねー」と風向きが急に変わって、すみません。
 また、Uさんが関わっている四国の商店街でのアートによる活性化事業についても伺いました。5年続けてきて、地元の方から「Uくんにこんなことやってもらおう」という提案が出てくるようになったとか。そこまでが大変な道のりだと思うので、感心しながら聞きました。よそ者にできるのは、地元の人に「自分たちがやらなきゃだめだ」と気づいてもらうことだけ。外から来た人が「何か」をしてくれる、と思われているうちはなにも変わらないでしょう。そして、こちらが一生懸命考えて提供したものが、地元の方の「何か」の感覚と違うものだと、関わった個人や「アートでまちづくり」のかけ声に対する非難で終わりかねないもの。何を求められているのかを引き出すことが仕事なんだね、というコーディネーター同士の共感話になりました。
 さて、公式スケジュールの初日である今日は、ゴールドスミスカレッジの授業への参加。ここでは、アーティストを対象に必ずしもアートの専門家ではない一般の人々を対象としたワークショップを行う専門的な人材養成が修士レベルで行われています。午前中は自己紹介やコミュニケーションワークショップなど。午後は、これまでにやったことのない分野でワークショップをつくるというプログラム。日本人クループは日本人だけで班をつくることになり、私は「ひきこもり」を対象とした班に入りましたが、ひきこもりの何が課題なのか、どうなることが望ましいと設定するのか、かなり難しい議論になりました。その結果、できたものは「ひきこもりの青年が自立支援施設につれてこられ、もちつきに参加するまで」を描いたごく短い演劇。ちなみにアチラの方々には「ひきこもり」という概念はないらしく、言葉自体の説明が必要でした。
 金曜日までに、ひきこもりの人を対象としたもっとワークショップのプログラムを考えないといけません。なのにグループメンバー4人が話し合う時間がとれません。昼間の予定はすべて詰まっているし、夜は個人的に用事を入れた人もいます。結局、朝食や昼食、移動時に話しあうことに。
 午前の休憩時間にスモモをくれて話しかけてきたトリニダード出身のペトリース。プロポーションとチョコレート色のお肌が美しい女性です。トリニダードにもたくさんのアーティストがいて、アート以外の現場で活動する人もけっこういると言います。ただし、彼女がロンドンで学んだあと、お国で仕事があるかというとそういうものではなく、自分で資金調達からしなくてはならないとか。いずこも同じです。
 授業終了後、特別な予定のない4人の日本人で一緒にホテル方面へ戻り、夕食を食べにいくことに。その前にパブで1杯といわれ、飲めない私もハーフパイントの黒ビールを注文しました。それから歩き回って、けっきょくバングラディシュのカレー屋さんに。辛くないものをいくつか選んで皆で食べました。おいしかった。
 そのテーブルでの話題。私たちがやっていることは、けっきょくおせっかいではないのかという話。別に変わる必要がないかもしれない人たちに「こうあるべき」と押しつけるものではないだろう、ということ。でも、アートでできることがいろいろあるのに、そのことが知られていない現状では、押しつけがましい点があろうともまずは知ってもらうことが重要では? こんなこともできる、と知ったうえで、それをしないのはOK。選択肢に入れてもらうことが先決です。
 今回のツアーは英国のシステムから学ぶことも多いと思いますが、同業者同士の意見交換がとても有効だと思えます。うれしい。



Posted by アートサポートふくおか at 11:19│Comments(0)
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