2009年05月08日

別府その二

 8日(金)別府2日目。
 朝、ホテルを出る準備をしていたら、テレビの情報番組で「やねだん」の紹介をしていたので出発が10分遅れました。「やねだん」は鹿児島県鹿屋市の柳谷集落のこと。むらおこしで有名な地域です。空家に芸術家を住まわせたりもしています。この春からは農業をやってみたい若者を空き家に誘致する活動も始めたとか。
 歩いて中央公民館まで行き、昭和3年に建てられたという建物の外観を拝んでからバスで鉄輪(かんなわ)へ。「混浴温泉世界」の会場のひとつになっている地区なのですが、到着したところでメイン会場のギャラリーが休館と分かってがっかり。そうでした。だから昨日のうちに行けないかとあれこれ考えて、このギャラリーで行われるアート・ボランティア養成講座に参加しようとしたのですが、3回の講座を受けたあと、実際にボランティア活動をするのが条件と言われたのであきらめたのでした。まあ、いいやと歩き始めて、インフォメーションセンターのところまで来たけど誰もおらず・・・。ムリを承知で地図を頼りに歩き続けたら「作品」のところまでたどり着きましたが、公民館のなかに設置されているので、中に入るには係の方の案内が必要でした。その「係」が不在で、さっきのインフォメーションセンターに戻って尋ねるようにと掲示されています。仕方なく戻ると今度は人がいました。このように、まち歩き型イベントは鑑賞者の能動的な行動が要求されるのですね。作品が1カ所にずらっと並ぶところに入っていくわけではないので、自分で作品を探し出す覚悟が必要です。
 ところで、さきほどの公民館の作品は映像で、ほふく前進でまちを這って回るアーティストの姿と、アーティスト目線のカメラが捉えたまちの様子。ほふく前進、大変お疲れのご様子で応援したくなります。なぜ、こんなしんどいことをするのでしょう。きっと、そうしなくてはならない何かがあるのでしょうね。アーティスト目線の映像では、川におっこちそうになったり、露天温泉につかる人々に混じってお湯に入ってしまったり。同じアーティストの作品が国際観光港にもあります。この作家さんは1年ほど前に別府を訪れたそうですが、このように別府での滞在制作で、ここでしかできない作品制作を基本とした展覧会。会期の数週間前に現地入りした作家も多いと聞きましたから、事務局の苦労が忍ばれます。
 公民館に案内してくださった係の方はボランティアではなく事務局スタッフですとのこと。ボランティアの人数が足りなくて、すみませんと言われました。いえいえ。
 鉄輪から国際観光港へバスで移動。行きとほぼ同じ道を戻り、ビーコンプラザの横を通りました。なるほど大きい。別府アルゲリッチ音楽祭のメイン会場ですよね。今年11回目というだけあって、まちなかのポスターやバナーは「混浴温泉世界」より行き渡っている感じがします。ちなみに音楽祭のほうは5月11日からの開催です。
 午後は、NPO法人BEPPU PROJECTの坂本倫子さんと打ち合わせ。坂本さんには「連続講座2009 アートでつなぐ人とまち」のゲストとして7月4日に福岡においでいただきます。今回の別府行きは、この打ち合わせがメインの用件だったのでした。もろもろお話したなかで、学生ボランティアからNPOの専従スタッフになったユニークな経歴についてもうかがいました。「生活していけてます?」と失礼ながらお尋ねすると「はい、まあ、なんとか」と驚くべき答えが返ってきたのでエビぞりました。坂本さんのように20代半ばから下の世代では、こんな方も出てきているらしい・・・。こういうお話も福岡でぜひうかがわなくては。  


Posted by アートサポートふくおか at 22:48Comments(0)アートと地域

2009年05月08日

別府その一

 5月7日(木)8日(金)、別府現代芸術フェスティバル2009「混浴温泉世界」を見てきました。このフェスティバルは6月11日まで開催しています。詳しくはこちら→http://www.mixedbathingworld.com/

 以下、2回にわけて道中のあれこれをご報告します。
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 7日8:34博多駅交通センター発の高速バスで別府へ。2時間半ほどのドライブ。風邪気味で体調に不安があり、ずっと寝ていました。少し寒い。
 お天気はかなりいいようです。日差しがまぶしい。
11時すぎに到着。まずインフォンーションセンターに行って「パスポート」を購入。1800円ナリ。マップをもらって見つめるも、この時点で自分がまち歩き型イベントには不向きであることを思い知らされました。ワカラナイ。今いるのがココで、一番近い作品はココだけど、地図上で簡単に書いてあるソコにはどうやって行ったらいいの? とりあえず、歩き始めましたが、地図を見ながら歩いても作品のポイントに到達できず、どこを歩いているのかわからなくなり、途方にくれました。同じところをかなりグルグル回った感じ。最初に見つけた作品は、神社の境内に温泉水を入れたお皿がたくさん並ぶもの。水は干上がっていましたが。周辺は風俗のお店がたくさんあり、店の前でオジサンたちがたばこを吸いながらこっちを見ています。
 フェスティバルの青い旗を頼りに半ばヤケクソで歩き回り、いくつかの作品と遭遇しましたが、アーケードの商店街には閉じたシャッターや壁に大きな絵が描かれていたり、写真の展示があったり、店先の見せ方がもともとアート的なまちのようです。今回のイベントでの作品を見て回るというより、町並みのなかのアート的なものを探して回るツアーになりました。これらは、アート系に限らないさまざまなまちづくり・まちおこし系NPOなどの取り組みが以前から行われていることも影響しているのでしょう。
 おもしろいと思ったのは「わくわく混浴アパートメント」。清島アパートという6畳一間、トイレは共同、お風呂なしの古いアパートに100人ほどの若いアーティストが入れ替わり立ち替わり滞在しながら作品を制作・展示しています。日々、制作活動が行われているので、その様子をそのまま見ることもできるし、作品が変化していきます。公開している部屋以外にアーティストの宿泊用の部屋もあるそうですが、私がたまたま話しかけた男性アーティストは「もう部屋がいっぱいなので、ボクはこの部屋(押入のなかにペイント中)に寝袋を持ってきて寝てます」とのこと。2Fへの階段を上がってすぐの壁に大きな絵を描いていた女性は「あと4日くらいで、私は東京に帰らないといけないんだけど、できあがらないんですよねー」と笑っているし、この混沌がステキ。1Fにあった小さな黒板を見ると、その日の受付・掃除などの当番や取材の予定、ミーティングの時間などが書き込まれていて、「共同体」として運営されている感じが楽しそうです。この日の取材はNHK「日曜美術館」。5月31日OAだそうです。でも、あの番組の雰囲気とこのアパートの感じは少し違うんですけど。
 GW明けの平日昼間ですが、私と同じように地図を持ってきょろきょろしている人がけっこういます(私ほど同じところをグルグル回る人はいないでしょうが)。インリン・オブ・ジョイトイの作品(予約制です)を一緒に見た男性はネットで探した素泊まり2500円(個室)のゲストハウスに滞在しているとか。1Fがお風呂、2Fが宿泊所、広間で雑魚寝だったら1500円だそうです。ところで、インリンの作品は、彼女が「赤ちゃんを育てながら働き、強く生きる女性」に扮した映像作品を昔の特殊飲食店で流しつつ、2Fでは牢獄のような部屋の隣に赤ちゃんをイメージさせるインスタレーションがしつらえられたもの。お店は、もちろん今は営業していないのですが、その一帯はいわゆるそーゆーお店が建ち並ぶ小さな路地。戦災に遭わなかったので昔のままの狭さ、猥雑さで残っているのだそうです。ただし、もろもろの法律にひっかかるので営業はできない、でも所有者の権利もあるので取り壊しもしないまま、という地域。案内してくださったボランティアの女性は「まちにはこういう場所も必要なんでしょうねぇ」とサバけておられました。住民も行政も、あえてそのイメージを払拭してしまおうとはしていないようです。かといって活用することもなく、そのまま? 
 時折「きつねの嫁入り」状態で雨が降りましたが、日差しは強く、晴雨兼用の傘が大活躍。
 風邪具合がシンドイので予定より早くホテルにチェックインして一休み。そのあと、オンパク主催の「竹瓦ゆうぐれ散歩」に参加。オンパクについてはこちら→https://www.onpaku.jp/com/
 ゆうぐれ散歩はボランティアの方が解説しながら案内してくださる1時間ほどのまち歩きツアー。また歩くんかい、ですが、どんなルートでどんな話をされるのか興味があったので参加してみました。海沿いのホテル前から路地やたくさんある温泉をいくつも、ぐりぐりと狭いところに入り込みながら案内していただきました。地元の人しか知らない、ふつうの観光客向けガイドとはちょっと趣の違うお話があっておもしろかったです。ガイドさんはまだ若い男性。スーツにネクタイ姿。もう6年もガイドをされているとのこと。観光業の方でしょう。1人暮らしですが、お部屋に風呂はないそうです。100円で入れる共同温泉などがたくさんあるから。ただ、別府の温泉は温度が45度前後と高く、地元の方は水で温度を下げたりしないので、地元の方が利用するお湯に入るには慣れが必要とか。水を入れると怒られる!のだそうです・・・私はムリです。まち歩きツアーの終着点は竹瓦温泉。その前のお店でお茶とお饅頭がいただけて、ツアー料金500円。よろしゅうございました。
 竹瓦温泉の砂風呂は肩こりにいいと聞いたので、入ってみたかったけど、ちょっとしんどいので薬局に寄ってホテルに戻りました。風邪薬が効いたのか、今は具合がよくなり、空腹感も出てきました。ホテルは大きな観光ホテル。ビジネスプランなんですが、空いてたんでしょうか、ベッドが4つもある広ーい部屋です。
 今、テレビで別府アルゲリッチ音楽祭のことが流れていました。大分の地元番組でしょうか。総合プロデューサーの伊藤京子さんへのインタビューも放送されていました。今年の音楽祭の見所に関するコメントですが、別府のまちを「温泉」だけでなく「音泉」にしたい、アート系のフェスティバルやオンパクの取り組みなどもあって、別府が洗練されたまちに変わりつつある、という発言もされています。芸術はまちや人と関わるものだという伊藤さんらしいお話だと思いました。  


Posted by アートサポートふくおか at 22:43Comments(0)アートと地域

2009年05月05日

魔法の授業

朝の報道番組で、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンの教育プログラムが紹介されていました。ラ・フォル~は本家・フランスの有名なイベントを東京に移植した、クラシック音楽の一大イベント。安い金額で子どもから大人まで気軽にクラシックが楽しめる工夫がちりばめられた祭典です。朝から晩まで、45分くらいの短いコンサートがあちこちで行われ、子どもを対象としたプログラムも充実しています。
ファンキーな感じの公式サイト→http://www.lfj.jp/lfj_2009/

番組では、そのイベントの一環として行われた小学校での音楽家による授業の様子を「魔法の授業」と題して紹介していました。
クラシック音楽に「堅苦しくてつまらない」という印象を持つ子どもたちが、目の前で室内楽の生演奏を聴き、音楽と音楽家に親しむ授業を経験したあと、ホールでオーケストラのコンサートを鑑賞します。効果てきめん、子どもたちの表情が変わっていく様子が、ごく短い編集でしたが、映し出されていました。
一緒に見ていた長女が「いいなぁ。ウチの小学校ではこんな授業がなんでなかったんだろう」とつぶやきました。そうだね。母は、君たちにこういう経験をしてもらいたくてNPOをつくったんだよ。でも君には間に合わなかったね。君の子どもの時代には、福岡でもきっと・・・。
  


Posted by アートサポートふくおか at 23:17Comments(0)子どもの芸術体験

2009年05月04日

浦島さん

ある方の論文で読んだのですが、「浦島太郎」のお話で、最後に浦島さんが玉手箱を開けたらおじいさんになってしまった、というくだり、お話を読んだ子どもたちは(大人もそうですが)年をとることをネガティブにとらえてしまう場合もあるようです。論文のなかでは「老いはなにかの罰なのか」という問いかけがされていて興味深く感じました。玉手箱を開ける前、浦島さんは竜宮城で酒池肉林の生活を送っていたわけで、本来ならこっちの世界であくせく働いたり、人とのあつれきに苦しんだりしながら成長しつつ生きていくべき時間をほけーっと過ごした、そのことが問題なのですね。老いは成熟も意味するはずで、成熟しない「空っぽの老い」(著者の言葉です)が恐ろしいことなんです。私は竜宮城には行かないし酒池肉林もしませんけど、よほど意識的に生きていないと「空っぽの老い」はすぐにやってきそうな気がします。
明日は長女の19歳の誕生日。自分の歳より子どもの年齢で時間の経過を切実に感じます。  


Posted by アートサポートふくおか at 22:22Comments(1)

2009年05月03日

満員御礼

終日、春日。朝から「紙ヒコーキ工作塾」の申込受付でキンチョー。申込受付開始前のお問い合わせが多かったので、あれこれと想定し、本日ご出勤の職員さんの総力をお借りして対応しました。電話&FAX&来訪によるお申し込みの嵐。定員30名+若干名のキャンセル待ちの受付が10分あまりで終了。お断りせざるをえなかった方々、誠に申し訳ありません。
  


Posted by アートサポートふくおか at 22:42Comments(0)

2009年05月01日

法人税

意を決して法人税等の計算業務。苦手なんです。苦手だからこそ、早く終わらせたい。手帳の5月1日のところに「法人税」とボールペンで書いて、絶対この日にやってしまうゾと決めておりました。ああ、世の中というものは、なぜこんなに複雑なシステムで動いているのでしょう。税金の制度作ったの誰? もっとシンプルにならないのか・・・。それでも15:00前に納付書の記入までできたので、よっしゃ!と銀行に走り、すっきり納税。あーさっぱり。
予定より早く終わったので、福岡アジア美術館の「白洲次郎と正子の世界展」へ。もう時間がとれないかと思っていたので、うれしい。英国仕込みの「カントリー・ジェントルマン」だった次郎と独自の美的センスを持つ正子の生活の場が再現されていました。おもしろかったのは、仕事を引退したあと日曜大工を趣味としていたという次郎がつくった竹製の調理道具や家具なども展示され、食卓の料理(つくりものだけど)も再現されていたこと。我が家でこれをやられたら、かなりハズかしいなぁ、と。
展覧会を駆け足で見て回って、監事を務めるNPO法人ふくおかNPOセンターの事務所へ。今日が総会なので、その前に監査。ウチと違って事業規模が大きいNPOなので会計処理も大変です。今年度は弥生会計(いい名前!)を導入したそうですが、使いこなすまでには時間がかかりそう。総会にはさまざまなNPOの関係者や企業の方など会員さんが集まりました。「NPOの総会って、どんなことするんだろう?」という関心を持って参加される方も毎年おられるようにお見受けします。ご関心がおありの方は、どこかのNPOの会員になりましょう。  


Posted by アートサポートふくおか at 23:36Comments(0)