2009年04月06日

ロンドン日記090401

 4月1日。
 G20開催の影響で「プロテスト」といわれる大規模なデモがあると聞いていました。宿泊したロンドン・リバプール駅の周辺に金融機関の本店が集まった地域があり、そこを目指しての集会が行われるので、人があふれて歩けない状態になるかも、と予約したレストランで言われ、すごく楽しみに(?)していたんですが、空振り。デモはどこにいったんでしょう? 警察がたくさんまちに出ていて、交通規制をしていたようだったから、道路が封鎖された、ということかな?

 朝食時、金曜日のゴールドスミスでの発表にそなえ、「ひきこもり」班でワークショップのイメージを話し合いました。その過程で、障がい者との活動をするOさんが「期間を決めて達成目標を設定するやり方は違和感がある」といわれました。障がい者との活動では、その日1日にやることのメニューは決めても、何ができるようにならないといけない、といった目標は定めない、と。日頃、私が活動している学校では、目標設定と到達度の測定はある意味、必須のこととされています。アートに関わる活動では、それはとても窮屈で、矛盾しているなと思うことがしばしばです。でも、そうでないと受け入れてもらえないので仕方ない・・・そう思っていましたが、Oさんは「むしろ障がいのある人たちのほうが人として素直なあり方で、世の中を彼らにあわせたほうがいいと思う」と言われたのにははっとしました。ただ、達成感が成長を促す面もあるので、目標設定が一概に悪いわけではありません。ひきこもりの人を対象としたアートワークショップの目標設定、それはどのあたりになるんでしょう? 社会でバリバリ働くこと? とりあえず家族に「おはよう」が言えること? 他人が同じ部屋にいても気持ち悪くない程度に心を開けること? 人それぞれのはずですね。

 今日の視察メニューは、午前:テイト・モダンの若者向けプロジェクトのレクチャー 午後:クリエイティブ・パートナーシップのプロジェクトである、中学校での演劇を活用した理科の授業の見学。
 中学校での授業は、理科離れの原因になりそうな化学記号などの学習を芝居仕立てで行うもの。病原菌が封じ込められた岩石が学校の敷地内でみつかり、この菌の感染者が広がらないよう、ワクチンをつくらなくてはならない、というミッションを背負った子どもたちが、菌のばらまきをたくらむエコテロリストと戦いながら、学校の各所にかくされた謎を発見し、ワクチンをつくって人類を救う・・・といったストーリー。謎解きをしながら学習を進めるので、楽しみながら勉強できます。ただ、このプロジェクトは5日間で終了なので、その後、学校の先生たちが従来どおりの授業をしたのでは、子どもたちの高まった興味関心も元通りでしょう。このプロジェクトの目的は、先生たちに新しい授業のあり方を考える契機とすること。生徒ではなく先生・学校を変えようというプロジェクトなのでした。
 今日は、最後の授業でグループごとに現在の状況説明と解明したワクチンの謎をお芝居の形でプレゼンする授業でした。私たちは見学のはずでしたが、アーティストたちが「国際医療機関の査察官」という役柄をつくってくれたので、一段高い審査員席に座って「審査」をする役を演じることになりました。学校に来たお客さんまで取り込んでしまう、こんな授業がいつも行われていたら、そりゃー子どもたちも変わるでしょう。担任の先生が、しばらく学校を離れていて昨日、子どもたちと対面したら授業態度が全然違うので驚いた、と言われていました。
 ただ、気になったのは、発表する子どもたちの態度が、必ずしもこの授業を楽しんでいるように見えなかったこと。英国では小学校から「ドラマ」の授業があるので、この子たちも演劇的手法には慣れているはずなのに、とてもそうは見えなかったのです。これなら日本の中学1年生と一緒。日頃のドラマの授業はどんなことをしているのだろうと気になりました。

 夜、ゴールドスミスの日本からの留学生で、即興演奏を専門とするコウタさんと有志でお食事会。コウタさんは日本で修士をとった後に1年の予定で英国に留学されています。この業界、ほんとに高学歴。
 視察ツアーも後半に入り、このツアーから何を持ち帰ればよいのか、考えるようになりました。私にとって今回のツアーで初めて知ることはほとんどありません。でも、知識・情報として知っていたことの現場を体験することができました。ただ、それだけでは不十分でしょう。まったく違う社会的文脈のなかにある日本で、英国が実現したものの後追いは無意味。何を学び取ってどう生かすことができるのか、それを考え始めると気持ちが沈んでいくのをどうすることもできません。テンションが落ちてしまうのは、お招きくださった機関には申し訳ないのですが、準備期間がなさすぎたのか「話が違う」状況がいくつかあったりすることも一因。もっと語学力があれば・・・と自分の非力さに腹が立つこともあります。
 プログラムはあと2日。ご一緒している日本の仲間から吸収できることもどん欲に吸い取っておかねば。



Posted by アートサポートふくおか at 11:33│Comments(0)
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