2009年09月03日

名残り

新潟の名残り? 腕と首に計3か所、なにかに刺された(噛まれた)ような跡が。かゆいです。ガイドさんが「ここはブヨが出るから作品に近寄らないほうがいいですよ」と言われていた、あの山奥ポイントでの被害か? 近寄らなかったんだけどな。

先日、研修会の講師を務めさせていただいた熊本県公文協でお会いした宇土市民会館の方が、会館のリーフレットを送ってくださいました。リーフの体裁もすてきですが、市民がつくったNPOが指定管理者になり、芸能のプロの方々が職員として運営に携わる、ちょっと珍しい文化施設の可能性をぷんぷん感じる内容でした。で、さっそくサイトを拝見・・・と思ったら、公式サイトがみつかりません。これも戦略? 行ってみないとわからない、行ってみたい会館です。  


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2009年09月01日

大地の芸術祭 新潟は秋でした

はい、続きまして「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」です。30日(日)の夕方、あうるすぽっとでのセミナーが終了したあと、新潟入り。8月31日の1日だけ、バスツアーでごく一部の作品を見て回りました。ものすごく広大な地域に約370点の作品が点在する、スケールの大きな芸術祭。何日も滞在しないと全体を見るのはムリです。
ほんの一部ではありましたが、今回のトリエンナーレのテーマである「廃校プロジェクト」と前回のテーマだった「空き家プロジェクト」の作品を中心に数はけっこう見てきました。とはいえ、私の関心は運営手法や地域との関係性。ガイドしてくださったボランティアさんにひっつきもっつきしていろいろ聞きだしたことを、その日のうちに書きとめたものから下記に転載します。

8月の終わりの1日、すでに新潟は秋の空気。行くところはすべて山と田圃ですが、稲は黄色く色づき穂がしなっています。もう2週間もしたら稲刈りの季節。小雨にそぼ濡れることもありましたが、ガイドさんによれば「真夏のカンカン照りでこの距離を歩くのは大変。今日はツアー日和ですよ」ですと。
1日しか回れないのでバスツアーに参加。乗車場所はホテルのすぐそば。9時15分集合で同じ場所に戻るのは19時ごろの予定。同じバスに乗ったのは23人。でも同じルートを回る2号車もいるから、平日なのに結構な人数が参加していることになります。しかも、私が参加したのは北回り。ほかに南回りもあります。ガイドはボランティアの方。日頃は横浜で仕事をされている女性。こへび隊メンバーです。こへび隊は学生が多いそうですが、社会人やリタイヤ組もけっこういて、700人から800人(3年前の実績)くらいいるそうです。東京方面から参加する方が多いようで、金曜日の夜8時、代官山発のこへびバスに乗って深夜に現地入り、土日に活動して日曜深夜に戻る、とか。ボランティアは温泉に100円で入れるし食事は300円、パスポート(作品を見るのに必要です)がもらえるなどの特典はあるものの、報酬はなし。しかも1人でバスに乗って丸1日のツアー全体を仕切る、かなり大変な仕事です。ガイドのほかに作品の管理、修理、ボランティアのまかないをするボランティアさんもいるそうです。今回のトリエンナーレは9月13日で終了ですが、すぐに秋の催しがあるし、常設されている作品のために雪に備える雪囲い、冬は雪かき、春のイベントと年間を通じてさまざまな活動があると聞きました。
今回ご一緒してくださったOさんは、横浜トリエンナーレではボランティアはされていないとか。この土地の魅力に引きつけられているのでしょうね。
バスの臨席に座った女性は地元の方なので、時間を見つけてあちこち見に行かれたそうですが、今日のツアーで行ける場所はとても山奥で1人では行けないのでツアー参加にしたのだとか。ボランティアのOさんも、「今日行くところは越後交通の運転手さんじゃないと行けない」と言っていました。
見ることができた作品は、ものすごい数。このツアーは今回のトリエンナーレの柱である「廃校プロジェクト」を中心に、前回のテーマ「空家プロジェクト」の作品にも寄ったし、場所の数では10か所に満たないくらいですが、作品数は無数。それでも、トリエンナーレ全体では作品数は370くらいだそうで、見て回ったエリアからいっても1日ではほんの一部しか回れません。
この芸術祭は2000年開始。今回が4回目です。最初は、現代アートなどわからないし、よそものが入って来る殊に警戒気味だった地元の方々が、作品を見にたくさんの人が訪れることを知って認識が変わってきたそうです。また、総合ディレクターの北川フラムさんが足繁く地元に通って対話を続けたこと、東京からきた若い学生ボランティアが一生懸命になれない作業に取り組む様子を見て、地元の方が手を貸すようになるなど変化が出てきた、と聞きました。実際、下条(げじょう)地区(ここは当初から好意的な反応だったそうです)は独自にバナーをつくって民家の軒先にも下げていたし、麦茶とおつけもので私たちをもてなしてくださるところもありました。普段は考えられないような多くの車が押し掛けることもあるので交通整理をしてくださったり。また、この芸術祭が経済的なメリットをもたらしていることも確かで、とっても安い値段で野菜や手作りの品を販売するテントが出ていたり、本日の昼食場所「うぶすなの家」でもてなしてくださった地元の女性のお話では「ここは私たちがつくった野菜を買ってくれるし、バイトする場所でもある」。経済の仕組みも組み込まれていることが継続できる秘訣なんでしょうね。
2000年には行政が管理する公共施設を中心に作品設置をしたのが、2003年は地域ごとの拠点施設4カ所ができ、2006年は空家プロジェクト、今回は廃校プロジェクトと、地元の理解がないとできない内容に進化しているようです。トリエンナーレは芸術の祭典であると同時に、地域振興イベントである、ということはガイドのOさんも話されていました。隣の作品まで歩いてはいけない状況を作り出すことで、「旅」をすることになる、そこから広がるさまざまなことを組み込んだイベントなわけです。

あ、作品のことを全然書いてなくてすみません。たくさん見たなかで印象に残った1点についてだけ書きます。「胞衣(えな)みしゃぐち」。地面を2メートルくらい掘って、再度、土を積み上げ、子宮のような空間をイメージしてつくられた洞窟のような作品。なんでまた、こんな大変なことを・・・。アーティストに「なんで?」と聞いても、「そのときはそうしなくちゃいけなかったんです」とか言われるのでしょう、きっと。3年前のトリエンナーレで制作されたと聞きました。時間の経過によってコケなどの植物が自然に発生していて雰囲気のある空間になっています。中心部に植えられた樹は生命の象徴なのでしょうか。いかにも人工的に植えた感じでヒョロヒョロと伸びていましたが、周辺の壁や地面に生えた地衣類のリアルさと対照的でした。
  


Posted by アートサポートふくおか at 23:16Comments(0)アートと地域

2009年09月01日

リリックシアターから学ぶこと

ただいま帰りました。東京・あうるすぽっとで「学校と芸術をつなぐ実践ストラテジー」、新潟へまわって「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」へ。それぞれ簡単にご報告しますね。簡単に、と言いつつやっぱり長文になるでしょう。すみません。
まず「学校と・・・」

主催はNPO法人シアタープランニングネットワーク。英国・ロンドンの劇場、リリックシアター・ハマスミスが展開する青少年を対象とした活動やその背景にある劇場の戦略について担当者から直接話をうかがい、学校と芸術をつなぐコーディネーターの仕事に関わる考え方を学ぶ・・・ことが目的だったはずですが、講師が家庭の事情で直前に交代されたせいか、内容が募集時のアナウンスとはやや違うもので、リリックシアターの活動事例と戦略のお話がかなりを占めておりました。ただ、学べる点はいくつもありまして、私なりに留めておきたい点はこんな感じ。参加していない方にわかりやすいメモではありませんが、自分のための備忘録として書き残しておきます。
なお、下記にも出てきますが、リリックシアターは劇場としてのさまざまな活動を行うなかで、青少年のための、それも必ずしも演劇のプロを目指すわけではない子どもたちのために演劇を活用することに力を入れており、そこに他の劇場と異なる専門性を蓄積して社会的な認知を得ています。地域劇場のあり方のひとつの事例として大変興味深いです。

・子どもへの働きかけを行う活動の場面のうち、学校以外のカテゴリーのつくり方。リリックの場合、親子(「青少年」は14歳から18歳くらいを指すので、それよりも小さい子どもと親)、アーティストを目指す子とそれ以外の子が一緒に、アーティストの関与のもと行う活動(たぶん、内容もアーティスティック)、さまざまな事情があって劇場にアクセスできない子(社会的な課題がある子、虐待や犯罪を含む)、放課後のプロジェクト(子どもをストリートに野放しにしない)、仕事ベースの学習(ホールでの仕事につきたい子の就業経験)そして、それらをつなぐ活動、と設定している。

・アーティストが、対象である子どもに関する専門的な知識を有する必要はない。アーティストをソーシャルワーカーにする必要はないし、それでは劇場が劇場でなくなってしまう。ピアメンター(例えば、犯罪に手を染めてしまいそうな子にとって、同じ境遇から抜け出した少し年上のお兄さん)やプランをつくる専門スタッフが芸術以外の専門性を持ち、アーティストをそこにあてはめる。

・リリックでは、まず、子どもたちありき。集まった子の顔ぶれを見てふさわしいアーティストを決める。

・問題のある子にはピアメンターの存在は不可欠。ただし、すべてを劇場が抱え込むのでなく、他の専門家とのネットワークをきづいて、「ここから先は専門機関の仕事」と引き渡す。

・英国の手法はすべてポリシー、プリンシプル、そしてその運用法がきちんと文章化されている。このことがステークホルダーとの関係づくりにも生かされているように思える。

・英国のクリエイティビティ育成の考え方は、就労につなげるもの。だから、劇場の青少年向け活動でも、学校からはみ出してしまった子に資格認定を与えたり、上位の学校に行けるベースの学力認定が受けられるように考えられている。

・リリックは、社会に貢献する芸術に関わる活動をする、と方針を決めている。すべての劇場がその方向に行っているわけではなく独自の路線。このことがリリックの強みであり、ステークホルダーとの関係づくり、資金調達にもつながる。
  


Posted by アートサポートふくおか at 23:00Comments(0)文化施設